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(廃) 東海道線旧線 箱根第二隧道 [high線]

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 東海道線は当初、技術的制約から箱根を御殿場側に迂回する線形を取ったわけですが、
度重なる災害や丹那トンネル・横須賀線の開通に伴い身を削られてゆき、
幹線から支線に格下げとなった後には相当の放棄物件が発生しました。

今回はそうした放棄物件の中の、「昔話」が彩る鉄道黎明期のトンネルを訪問します。


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 足柄の山深くに口を開ける二本のトンネル。
日本に鉄道が敷かれてまだ20年経たないうちに造られたもので、
竣工後100回近くの四季を感じ続けてきました。左側は現役線、右側が放棄されたものです。
 左トンネルはコンクリート造に見えますが、よく観察すると石造のポータルの一部が突き出していて
このトンネルも元々は右トンネルと同じような構造だった事がうかがえます。

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 接近。こういうノリ面の処理は、情景作りに活かしたい所。
ところでこのトンネル、ポータルの上に何やら見えますが…

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 実は鳥居と祠があって、お稲荷様が祀られています。その名も「線守稲荷」
どうも近くで撮ったトップの画像のネコもお稲荷様みたいに見えてきてしまいますが、

 このトンネルを造った際にキツネの巣を潰してしまい、開通後列車でここを通ると
線路の上に大岩が置いてあったり停止信号を振る人が見えたりし、
慌てて列車を停めると岩や人は消えている、という事が何度も起きた。
ある時牛が向こうから走ってきたのでとうとうノーブレーキで突っ込むと、
牛はおらずキツネが死んでいた。

という事件があったそうです。
なわけで、トンネル工事を請け負った業者と駅の職員が
トンネルの上の巣があった場所に祠を建て、お稲荷様をお祀りしたという事ですが、
この話、「駅が出来ると街が廃れる」話と同じくらい結構よく聞く話だと思います。
絵本にもなっているので、子供の頃聞いたという方もいらっしゃるんではないでしょうか。

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 鉄道関係の祠だけあって、随所にレールが使われていたり、
祠の中の鳥居は鉄板をリベット止めという、なかなか面白い場所でした。

 線守稲荷で探索の安全を祈願したら、いよいよ入坑です。
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石造ポータルが重厚なヨーロッパ風のトンネル。
アーチ頂点の要石には何か彫られているようなそうでもないような、イマイチ判全としませんが、
彫られているとすれば竣工年かなんかのはず。
石材は丁寧な細工で面取りされ、紙一枚挟む隙間もないほどに組まれており、
近くで見ればさらにその細工の細かさに驚かされると思います。

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 石はポータルのみで、内壁はレンガ巻きになります。
祠がある場所の天井だけ工事の関係でコンクリートで補強したという感じも受けますが、
基本的に全面レンガ巻き。電線を通していたと思われる金具も随所に残ります。
 戦時中は軍需工場・倉庫としても使われたようですが、そちら方面の痕跡は全く残っていません。

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 百年の歳月は、レンガの壁に伊達では出せない風格を与えています。
古色蒼然とした表情だったり、現代アートのような表情だったり、
トンネルの探索で最も面白いのが、こうした入坑直後の壁面の変化ですね。
裏を返せばそれ以降は冗長という事でもあるんですが…
比較的温暖な気候もあって、覆工にはそれほど目立った破壊はありません。

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 しばらく歩くと、壁面に大きな変化が現れました。
黒光りする砂鉄のような粒子がこびりついて、1cmほどの厚さで壁面を覆い始めます。
 このトンネルは供用時は登り勾配の路線でした。つまり蒸気機関車が圧を最高に高めて、
黒煙を吐きながらゆっくりとトンネル内を進んでいったわけです。
吐き出された黒煙はトンネルの中に留まり、煤煙となって壁一面にこびり付きました。
SLが日常的に走っていたトンネルに入るのは初めてなので、この光景は衝撃的でした。

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 電線受けも高熱に晒されて焼けています。
湿気に高熱と、鉄にとっては居心地のいい環境ではないでしょう。

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 ほぼ直線で見通しのよいトンネルではありますが、退避坑もきちんと設けられています。
退避坑の入口は、内壁のレンガの積み方がよく判ります。
意外と複雑な組み方をしているんですね。

 このトンネルの入坑に当たって気を付けたい事は、
途中の退避坑が何本か現役トンネルと接続している事です。
特に立ち入り禁止などの表示はありませんが、ふらっと入ってしまうと
逃げ場のない現役トンネルにいきなり飛び出てしまいます。
現役線に入らずとも、退避坑に向かってフラッシュを焚いてしまい、
運転手に迷惑をかけるなどの事例が続くと、封鎖されてしまうかもしれません。
 トンネル床面はブルで均された痕跡があり、定期的に管理されているようなので
厚意を受けるつもりで、マナーを守って探索しましょう。

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 トンネルも中盤になると、水脈を抜いてしまったのか結構な湧水があります。
水が流れた場所は煤煙が洗われ、かなり肉々しい色合いになっていました。
煤煙に覆われている場所はレンガも焼かれて、ほとんど白黒の世界ですから、
突然現れるこの赤い壁はなかなかインパクトがあります。
 また、今まで目立った破綻がなかった覆工ですが、
この画像の範囲は肉眼で判るほどレンガの並びが歪んでいました。
何回もの地震にも耐えてきたこのトンネルですが、閉塞が始まるとしたらここからかもしれません。

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 そうこうしているうちに反対側の坑口が迫ってきました。
轍に水が溜まって、きれいな「逆さ坑口」になっています。
出坑前にポータルに最接近。細工の細かさがお判りになるでしょうか。

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 こちらが国府津側坑口。
意匠としては御殿場側と同じですが、崖を抜いたので翼壁を持ちません。
また隣のトンネルの坑口延伸部がかなり接近していて、
上にも落石覆いがあるので、圧迫感を受けます。現役時代だったら逃げ場がなかったでしょう。
 実はこの国府津側坑口が、最近まで一番アクセスしやすい場所だったのですが、
国道旧道に接している事があってか、
保線用通路が背の高いフェンスで封鎖されてしまっています。
ブッシュがはれれば坑口前の沢に残置されたガーダー橋も見る事ができそうですが、
あまり目立つのもよくないので再びトンネル内に撤収。

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 見落としたものを拾いながら、お決まりの写真を撮って御殿場側に出坑。
たっぷり一時間かけてしまいました。

せっかくなので旧線敷を御殿場側に向かって歩きます。
やがて酒匂川に行く手を阻まれ、
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第一酒匂川橋梁の橋台跡の上に出てこの区間の探索を終了しました。
コンクリート製だと意外と薄くてびっくりしたりしますが、
この橋台は上がちょっとした広場ほどの広さ。
明治時代の面影を強く残す石造橋台ですが、対岸の橋台は撤去されています。

 場所をさらに移して、山北駅に静態保存されているD52も見る事にします。
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 D52は、先ほどの箱根第二隧道を実際に走ったことはないようですが、
戦時設計でありながら国鉄最強蒸気として沼津・山北・国府津をねぐらに御殿場線に君臨し、
この70号機は御殿場線SLラストランを飾った機体だそうです。

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 蒸気機関車の魅力は、なんと言ってもこの有機的な造形でしょう。
スゲェ大きな動輪とか、スゲェ油が垂れてる軸受けとか、運転台にはバルブとメーターが並び、
ボイラーの下のよく解らんゴチャゴチャした所とかがとにかくスゲェ。
※出典:ギャグマンガ日和

電気機関車より遥かに非力だという事が未だに信じられません。
NゲージでもD51が最新技術でモデファイ&競作となっているようですが、
欲しいけどあの油臭さとか、近付いた時の熱気は模型だと表現できないしなぁ。

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 年に数回、機関区の元技術者が手入れをしているという事で状態はよく、
特にロッド周辺はかなり丁寧に磨き出されています。
テンダーの電装がかなり壊されているのは残念ですが、結構動態復活もありなんでは?

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 明治・昭和と、技術の限界に挑んだ技師の息吹きを感じる山北駅周辺でした。

●独断と偏見による廃線指標
難易度☆★★★★
見所☆☆☆★★
ワクワク度☆☆☆☆★
ガッカリ度☆☆★★★
総評
 廃止から長い間生き残っているので、
マナーさえ守れば末永く楽しむことができる場所だと思います。
由緒ある(?)線守稲荷は注意深く探せば簡単に見つかります。
列車の時間を確認するため、時刻表はあったほうがいいでしょう。
普通列車はゆっくりだけど編成が短いので音もなくいきなり来るし、
特急はすっ飛ばして来るので、どちらも気づいた時には遅いです。
 D52の隣の福祉センターは日帰り入浴施設完備。リーズナブルです。


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はまさん

eternityさま、nice!ありがとうございます。
by はまさん (2010-10-25 20:17) 

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